削減が進んで削減費用が高い場合、最初の枠の配分が適切であれば排出量取引は行われない(秋元圭吾「排出権取引制度について」(RITE、2007年10月15日)2.(1)。3.4)。一方、枠が適切に配分されていなければ取引が生ずるが、これはその生産抑制によって国内での技術開発投資に回されるべき資金を外国に移転することになる。
上記の取引を必要としない状態と比較して、この取引を行わざるをえない状態はそれを支払う企業の公平性と国の政策の状態を悪化させている。これは、所得分配の公平性の問題を別にしても、資源配分の効率性を価格指標で行うことによる最適性とされるものが、実際には産業政策的な要請とは合わないということである。
このように、最適な配分をしていれば取引をする必要性がないことから、ここでは最初の枠配分の適切さが決定的なものとなる。そこでは、国の将来にとって重要な技術を評価する政策的判断が必要であり、国の中で排出量の目標を分野毎に設定するときにはそれが最も重要となる。これは、日本のみならず他の先進国においても同様である。
日本政府は、前述の「エネルギー革新技術計画」等において国際的に技術開発のロードマップを共有していくことを提案している。日本の「エネルギー革新技術計画」と同様に、アメリカには“Climate Change Technology Plan”(2006)、EUには“Europe Strategic Energy Technology Plan”(2007)がある。
一方で、排出量取引制度は、削減が遅れて削減費用が低くその枠を売って利益を受ける企業にとって、あえて削減を進めて費用の高い技術開発を促進するようには作用しない。このように、この取引制度は技術開発政策において意義をもたない。